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大阪高等裁判所 昭和36年(ネ)462号 判決 1964年3月12日

控訴人 株式会社 まからずや洋品店

被控訴人 神戸税務署長

訴訟代理人 水野祐一 外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訟費用は控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

当裁判所は控訴人の本訴請求を棄却した原判決を正当と認める。その理由は、左記のとおり付加する外、原判決理由に記載するところと同一であるからここにこれを引用する。

成立に争のない甲第一、二号証第三、四号証の各一、二、乙第一、二号証並びに原審証人辻本勇同井内昭二、同渡辺辰治郎の各証言に弁論の全趣旨を綜合すると、控訴人は昭和三二年八月三〇日被控訴人に対しその昭和三一年七月一日から昭和三二年六月三〇日までの事業年度分の法人税確定申告を別表第一記載の如くなしたが、被控訴人は右確定申告につき昭和三三年三月三一日別表第二記載の如き第一次更正処分をなし、これに対し控訴人から再調査請求があり、昭和三四年四月六日大阪国税局長は審査請求棄却の決定をなし、右更正処分並びに審査決定の取消を求める本訴訟が提起された後被控訴人は昭和三五年四月三〇日別表第三の(一)(二)記載の如き二個の法(通)第五六一号第二次再更正処分並びに法(通)第五六二号第三次再々更正処分をなし、右二個の処分通知書は一個の封筒に同封され同時に控訴人に到達したこと、被控訴人の右第二次再更正処分並びに第三次再々更正処分は、昭和三四年法律第八〇号による改正後の法人税法第三一条に基いて行われたものであること、控訴人の確定申告に対し被控訴人が右第一次更正処分をした理由は、控訴人から昭和三一年七月一日その代表取締役である訴外植村忠三に対し控訴人所有の神戸市兵庫区水木通一丁目三五番地所在の建物を時価に比べて著しく低廉な価額で譲渡し右譲渡価額と時価との差額一、三七三、五六〇円は控訴人が植村忠三に贈与したものと認められ、よつて、右差額は法人税法第九条第三項の寄附金にあたるものと認めたためであるが、その後の調査により右第一次更正処分の更正決定通知書に記載されている理由の附記は寄附金一、二七五、二〇三円と記載されているにすぎず且つその金額も一、三七三、五六〇円とすべきを誤記されていて更正を相当とする具体的根拠が明示されておらず法所定の附記理由として不備であつたので、被控訴人は本件第二次再更正処分により所得金額法人税額等を控訴人の確定申告書に記載された額と同一額にいつたん減額した上右第一次更正処分をなしたと同一理由で第三次再々更正処分をなしその更正決定通知書に更正の理由として前記更正を相当とする具体的根拠を明示したものであつて、第二次再更正処分は第一次更正処分を、第三次再々更正処分は第二次再更正処分を、それぞれ再更正したものであることを認めることができる。

控訴人は、右法人税法第三一条は昭和三四年四月一日以降に終了した事業年度分の法人税に限り適用さるべきもので、本件第二次再更正処分は昭和三二年六月三〇日に終了した事業年度に関するもので右改正前の同法条によれば減額する再更正処分は許されないものであるに拘らず減額する再更正処分であつて重大なる瑕疵があり無効又は取消さるべきものであるから右第二次再更正処分により本件更正処分取消の結果を生ずるものでないと主張するけれども、本件第二次再更正処分は昭和三四年法律第八〇号によつて改正された法人税法第三一条第一項の規定に基いてなされたものであることは前記のとおりであるが右改正法附則によればその施行期日は昭和三四年四月一日と規定され他に新法が適用される事業年度について特に規定されるところなく、右法条は課税の手続的規定でありこれを事業年度の如何に拘らず施行期日以降になされる再更正処分に適用することにより納税者の既得の権利や利益を不当に害するおそれもないから、事業年度の如何に拘らず右施行期日以降になされる処分に適用されるものと解するのが相当である。

しかして、控訴人主張の如く更正処分を相当とし審査請求を理由なしとする審査決定があつた後においても前記の如く更正処分に法所定の附記理由に不備があり違法があつた場合原処分庁がこれを再更正することをさまたげるいわれはないものというべきである。これらの点に関する控訴人の主張は独自の法律的見解であつて採用し難い。

してみると、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小野田常太郎 柴山利彦 下出義明)

表<省略>

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